
早川谷の高台に建つ龍雲荘
INTERVIEW
笹倉温泉龍雲荘
龍雲荘営業部長 猪又直人さん
焼山愛好会 樋口善栄さん
焼山の北麓、棚田広がる早川谷の静かな山間部にたたずむ一軒宿。火山と温泉という山の恵みとともに生きる人々の歴史や生活、そして焼山の魅力について伺いました。
登山者 に優しい宿をめざしたい

龍雲荘の猪又営業部長
猪又氏 ここ最近は、登山のお客様が増えているんですよ。百名山をめざす方など、火打山や焼山に登られる方は全国からいらっしゃいます。山スキーの方も、多くはないですがいらっしゃいますね。私は登山をしないのですが、山好きの方には魅力のある山じゃないかなと思っております。
登山される方には、予約のときにご相談いただければ、朝食用のおにぎりのご用意や、遅めの食事にもできるだけ対応したいと思っています。宿泊された方は当館の駐車場もご利用いただけます。実は登山口に駐車場やトイレがなくて、それは課題かなと思います。泊まらないで登山する方もけっこういらっしゃるので、駐車場などがあればもっと安心していらしていただけますよね。
頸城五山トレイルのことは、今回初めて知りました。今まで国道を回って行くしかなかった場所へ、山を伝って歩けるということにロマンを感じます。実際、笹倉温泉と妙高山って地図で見ると近いですよね。妙高山に登る方で、山のすぐそばだと思って予約されたお客様もいるんですよ。「山ふたつ違うんですよ」って言ったらびっくりされて。泊まってから分かったっていう方もなかにはいたんですね。

早川谷の米と水を使った地酒も

北陸の海の幸が並ぶ夕食。ノドグロやカニなどアップグレードも対応
薬師如来のお告げで開湯、名物の温泉粥

温泉水で炊いた「温泉粥」が人気
猪又氏 笹倉温泉はずっと一軒宿で、もともとダム建設のための宿泊地だったのですが、昭和50年代後半に旅館業として運営を始めました。旅館としては新しいのですが、温泉としての歴史は古いです。
笹倉温泉の開湯は、今から300年ほど前です。糸魚川市の砂場にある宋林寺の薬師如来のお告げによって、ここに温泉を掘り当てたという伝説があります。ですから今でも薬師如来を祭って、毎年5月8日には「薬師祭り」を行なっています。
浴場は、龍雲の湯と、千住の掛け流しの湯と、千住の露天風呂と3種類あります。それぞれ趣が違ってよいのですが、個人的には千住の掛け流しの湯が、温泉らしさが感じられておすすめです。 朝食にお出ししている温泉で炊いたお粥は、笹倉温泉の名物となっています。泉質がナトリウム泉なので、ちょっと塩気があり、味わいが変わるように感じます。糸魚川産のお米を、温泉で炊くことによって甘味が増し、ご飯の味がいっそう感じられ、お客様にも好評です。

立派な梁が天井を支える
変わらない谷の風景

龍雲荘の周囲には棚田が広がる
猪又氏 私はここに勤めて長いですが、ひとつ言えるのは、笹倉温泉から眺めるこの景色が、ほぼ変わっていないということです。昔、戦時中にこのあたりに疎開をしていて、懐かしくて訪れた方が、変わっていないとびっくりされていました。また、「これだけきれいな田園はなかなかない」とも言われたことがあります。
これからは地元と協力して体験ツアーみたいなものも取り入れていければと考えています。例えば山菜採りやキノコ採り、また郷土料理の笹寿司づくりなどの体験です。山に登って温泉入って体験して帰る、そういうのも楽しいんじゃないかなと思います。

焼山の麓に開けた明るい早川谷
焼山一筋70年
樋口氏 焼山登山道を整備している焼山愛好会に所属しています。もともと湯之河内(ゆのかわうち)という集落の青年会が、登山道整備を担っていたのですが、メンバーが高齢化して(笑)、焼山愛好会という名称に変わりました。 私自身は、高校を卒業してから50年ほど焼山の登山道整備を続けています。焼山の登山規制中は整備がお休みだったのですが、19年ぶりに規制が解除されて登ってみたら、登山道はそうとう荒れていましたね。岩場も多いので、足を置く場所も分からないくらいの状態でした。

焼山愛好会の樋口善栄さん

火山景観が特徴の焼山山頂付近